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パチッ④
「パチッ」
どれだけスマホ一台で世界中のすべての音楽を楽しめるようになろうが、俺は必ずCDを買うことを信念にしている。PCからスマホに書き込んで、ディスクをしまってアクリルケースを閉じる。一角だけ不自然に空っぽになった本棚の右上にそっと大事に立てかけた。音楽を捨てたとき、高校で軽音をはじめた時から集めていたCDもEPも全部売り飛ばした。二束三文にもならなくて、やっぱり音楽なんて馬鹿馬鹿しいと改めて思った。あの地下ステージの対バンから4年、俺はあの日のライブ終わりの気持ちをもう思い出したくなくて、二度と現場には行っていなかった。だがついに、中堅のレーベルから声がかかり晴れて悲願だった夢のメジャーデビューを果たした彼らは、インディーズ時代の楽曲を含めた一枚目のフルアルバムをリリースするに至った。40日ほど前に発売告知の報せを例のドラムから受け取って、朝から飛び起きてCD屋に行くと確かに検索端末にヒットするようになっていた。何も考えることなく、無心で予約して帰宅した。アルバムが届いた。キマったジャケットに嫉妬する。こんなときに限ってなかなか剥がれてくれない外装フィルムがもどかしい。読み込みを待ちながら収録曲をざっと見てみると、あのときもらったデモのROMには入っていなかった曲がかなり増えている。ぼーっと天井を見上げながら一曲一曲再生してみる。全曲再生完了して、また部屋に沈黙が帰ってきた。……おかしい。収録されていないのだ。流れてこないのだ。期待していた、あの曲が。あのとき俺が涙までしたあの最高の曲が。メジャーデビュー目指すなら、あの曲を売り出すことは不可欠と思わされるほどよくできた歌だった。どうして、俺は、手がかりが欲しくて歌詞カードを隅々まで探した。すると、裏表紙をめくった最後のページに、ギターボーカルのコメントが載っていた。
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