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十五才から十八歳 短くないはずの時間
思春期と呼ぶにはちょっと遅い期間クラスのみんなにはあったもの、僕ひとりだけ選ばれなかった者春の空 晴れた永遠黒板の寄せ書きに ひとりチョークが渡されなくて最後の日にも登校から下校まで ついに一言も発さなかったなにかの間違いではないかと一桁ずつ 一本指打法で何度も読み込んで 何度も何度も読み込んで飾り気のない真っ白な背景に、「ごめんなさい」と繰り返すしかなかった散った桜をアテに呑むストロングゼロは大人たちが言うほど美味しくはなかった法が僕を大人と呼んでも子どものままでありたい 拒否権をくれよ八十年の人生は何かを為すには短すぎるくせに何も為さないには長すぎる生涯現役と逃げ場を絶たれて与えられざる者として赤い本に青い本 グチャグチャに焚べても見分けがつく自信があるくらい透ける下敷き 小さいカード何度も床を共にしたいびつな形の三角形昔から数学は苦手だったよきっと一生使わない蛍光ペン筆箱の中整理しちゃったりなんかしてもうさよならなんだな2Bのシャーペン だいぶガタがきてしまってる買い替えることもないんだよなもうボールペンしか使わないんだよな「成長」が「老い」に化ける瞬間拝啓、
頑張ってるときは頑張りたくないと思ってるのに
頑張らなくてよくなってしまったら、なにか大事なものを取り上げられた気がしてしまうな
生憎、皮肉なことに、望みもしないのに、僕はすこぶる元気です
3年の努力が、18年の望みが、たった1クリックで全てなかったことになってしまっても
涙すら出ないくらい元気なんです
このまま遠い国に、誰も知らない場所に、この43821番の試験結果とハネムーンしたいくらい元気なんです
あーあ、母さんになんて言えばいいんだろうな
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